双子月
食堂は、2限が終わったばかりの学生で賑わっていた。

どちらかといえば小柄な朋香は、人波を掻き分け掻き分け、ようやくいつものテーブルに辿り着く。


「朋香、おはよ~。
どしたん、寝坊?」


真朝がニヤニヤとこっちを見ている。

その手には、2限の講義のレポート用紙。

ヒラヒラとわざとらしく、朋香の前でチラつかせている。


「…そだよ、寝坊。
ってか、真朝が取っててくれたんじゃないんでしょっ」


と、朋香は乱暴に、真朝の手からレポート用紙をふんだくった。


「えへ、ばれた?
私も寝坊して美穂に頼んでたんだよ~ん♪」


真朝はペロっと舌を出して、あっさりと白状した。


「言われなくても分かってます~。
美穂、サンキュね!」


朋香は袋の中からイチゴ大福を2つ取り出し、美穂の前に置いた。


「んも~、1個120円の風味堂のじゃなきゃ~…」


美穂は文句を言いながらも、朋香に目配せをしながら受け取った。

そう、朋香が心療内科に通っている事を知っているのは、友達では美穂だけなのだ。


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