双子月

2…片月 ~朋香~

カーテンの隙間から朝日が差し込む。


朋香は重たい目を開けて、携帯で時間を確かめた。

まだ6時。

今日の講義は午後からだ。


「…どうしていつもこの時間に目が覚めるんだろう…」


答えは簡単。

睡眠薬を服用しているからだ。


朋香に処方されている睡眠薬は、効果がそれほど持続しない比較的軽いタイプである。

だから効き目が切れる早朝に目が覚めるのだ。


朋香が心療内科に通っている主な理由は、夜眠れないから。

昔から寝付きが悪く、夢は見るし夜中に目は覚めるしで熟睡感が得られず、まともに1日を始められないのだ。



「ん~…、もう1回寝れるかなぁ…」


とりあえず布団の中に潜り込んだ。

頓服を飲めば眠れるのだろうけど、今から飲むと昼間が辛い。

それに、わざわざ布団から出る気が起きない。


その時、携帯の着信音が鳴って朋香の心臓も大きな音を立てた。

どうやらメールが届いたらしい。


(…誰だろ、こんな朝っぱらから…)


布団に潜ったまま、手探りで携帯を探し当てる。

ようやく手にし、ウンザリ気分で携帯を開いたが、相手が光弘だと分かると朋香の顔が輝いた。


『どうせ目ぇ覚めてんだろ(笑)
授業午後からだし、11時位にそっち行っていいか?』


…ウンザリ気分取り消し。

朋香は意気揚々と返事を打った。




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