双子月
「あ、先生、そろそろゴールを探さないと2人が待ってますよ。」


光弘は少しスッキリした顔で、腕時計を見ながら言った。


「そうだね、じゃあ進もうか。」


「はい!」


また手探りで2人は鏡の迷路を歩き出した。

光弘が前を歩き、林先生がその後を着いて行く。



「ふぅ…」



と、林先生は前を歩く光弘に気付かれないように溜息を付いた。


そして足元を見つめ、前髪を掻き上げながら、次は天井を仰いだ。

続いて横を見ると、鏡の中に、当然ながら自分がいた。



その顔が、さっき光弘に見せた柔らかい微笑みとは違って、鋭く狡猾的な笑顔に変わっているのを自身で見ながら、肩で笑った。



「…光弘君…」



「はい?」



林先生に呼ばれて、光弘は笑顔で振り返った。









「あのさ…」









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