双子月
アリーナの出口でジュースを飲んでいた美穂が、2人が出てきた事に気付いた。


「朋香、光弘と先生、出てきたわよ。」


朋香もジュースを飲みながら、出口の方を見て手を振る。


「光弘、林先生、遅かったですね。
そんなに迷ったんですか?
私達なんか、結構すぐ出れちゃったよね、美穂。」


と笑いながら2人に話しかける。


「いやぁ、実は僕、割と方向音痴だったりするんだよね。
僕が勝手に進んじゃうから、光弘君まで巻き込んじゃって。
でも彼のおかげでやっとゴール出来たよ。」

林先生が苦笑いで言う。


「そうなんですか、知らなかった~。
光弘は方向感覚、案外あるもんね。」


と、朋香が光弘の肩を叩こうとした瞬間。



パシッ



光弘が朋香の手を払った。

朋香はビックリして、逆の手に持っていたジュースの缶を落としてしまった。


「あ…わり…」


そう言いながらも、光弘は顔を背けている。

少し青ざめた顔。

朋香も動揺していた。



「あ、ほら、次は瑠璃子のお団子屋さんに行きましょうよ、ね?」


と、場の雰囲気を察した美穂が提案した。


朋香は初めての光弘の態度に不安を募らせつつも、美穂や林先生に気を遣わせないように、今は学園祭を楽しむフリをする事にした。



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