PARADOX=パラドックス=
ヒュージの落下跡地へ向かうには、悠久の騎士団が建てたバリケードを越えなければならない。
昔は五重のバリケードの外を武装した騎士が取り囲んでいて、それは近づき難いものだったのを覚えている。
しかし、それもオレが成人した頃(この文化では男子16才、女子18才)には騎士がいなくなり、バリケードも機能しなくなった。
「さて、探すってんだからまずは落下地点まで行ってみるかね」
柵を潜り抜け、ボロボロに崩れ落ちた壁を飛び越える。
この場所に限ったことではないが、ここは異臭がヒドい。
ゴミや死骸、時には死体の腐敗した匂いが漂う。
いくらこの地で生活をしているからといって慣れる様なものでなく、ふとした時に吐き気をおぼえるほどだ。
ぬかるんだ足元を踏み付けながら歩いていくと、民家の崩れた場所にたどり着く。
ヒュージ落下の衝撃波によって大破したものの残骸だろう。
「……っで……ろ……」
するとその向こうから何かが聞こえた。
「ん?人の声?」
オレは歩調を緩め、物音をたてないようにしながら近づいていく。