PARADOX=パラドックス=


「イロモノ好きな金持ちの慰みものにと思っていたのに、まさか皆殺されちまうなんて、災難だったでがすな」

金持ちの慰みもの、つまりあの女の子は人身売買の商品てわけだ。

にしても、気になるな。

あの子を買った人物が皆、殺された……とは?

「味見はサービスでさせてるが、その時にオレ達が部屋を出た瞬間、聞こえる断末魔」

「あっし達が入った時には客に息はなく、返り血を浴びてうずくまるこの女……」

ひょろ長い男が女の子の胸ぐらを掴み、無理矢理に立たせる。

女の子は身体に力が入っていないのかわずかに足が浮いていた。

男は顔がくっつくほどに近くで睨み付ける。

「お前いったい何なんだ?

どうして人を殺した後、お前は身体的に目に見えるほどに成長している?」

この男はいったい何を言っているんだ?


それに女の子は何も答えない。

「ブレイグルの女は身籠らないと聞いたから商品としてうってつけだと思ったんでがすが……

これじゃあ粗悪品にも劣るでがす。今日でお別れ、このゴミ捨て場で始末させてもらうでがすよ」

小柄な男は懐から拳銃を取り出す。

そしてそれを無抵抗な女の子の胸に突き付けた。

「……おいおいマジかよ」

大変な現場に居合わせちまったもんだな。

しかし、ここではこんなことは日常茶飯事と聞く。

ここは何も見ていなかったことにして、早々と立ち去りましょうかね。





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