PARADOX=パラドックス=
オレは白い煙を吐き出しながら、ちらりと女の子を見た。
今は小柄な男の手が離れてるってのに、逃げようって気持ちが微塵も感じられねぇ。
辛いもんだ……
まだたかが14、5歳ってところだろうに、生きることを完全に諦めちまってる。
「……気は済んだか?」
三回煙を吐いたところで男はそう言った。
「いや。だがもうアンタ達が待てないだろ?」
オレがそう言うと小柄な男は「ぎっしっしっ」と笑った。
「ああ、さよならだ。お兄さん」
冷酷な瞳が閉じられ、再び開かれる。
引き金を引く指に力が入る。
パンッ!!
砂礫の大地に乾いた銃声の音が鳴り響いた。