PARADOX=パラドックス=
崩れたバリケードを抜けて、オレは『枯れ木の森』へと入っていく。
ヒュージ落下以来、新たに葉が芽吹かなくなった森。
気味が悪いくらいに伸びきった弦や枝が、暗黒の地を更に暗くする。
枯れ葉が腐り土に還った柔らかな足場に幾度も足を取られる。
「はぁ、はぁ……ちょっとはマシになってきた…か?」
時折ふらついて、木に寄りかかる。
『……カシャン……キャン……』
「ん?何の音だ?」
遠くから聞こえてくる甲高い音。
恐らくはアレックスが向かった方向から聞こえている。
ふらつく足を手で叩き、活を入れ少しだけ歩調を早める。
「やはり、段々と音が近づいてきているな……」
『カシャン!ギャン!』
「……………」
『カシャーン!ガガガ!』
そしてオレは目を奪われた。
恐怖で釘付けになったのとは違う。
この感覚は……そうだ
魅力されていたのだ、目の前で繰り広げられていた戦いに。
命のやり取りに。