PARADOX=パラドックス=
一面の大地に所々火柱が上がっていた。
それは辺り一面を灼熱の焦土と化し、気味が悪いくらいに強く照らし出す。
アレックスの手に握られた緋色に輝く槍。
その槍から絶えず炎が吹き出している。
「何なんだよこれ?」
それに相対する黒づくめの男の手には灰色に鈍く輝く大剣が握られている。
「賊もなかなかやるものだな。決めるぞホニカ。緋槍奥義――」
アレックスの声に呼応するかのように煌めきを増す槍。
噴き出した炎が槍にまとわりつき、美しい鳥を形取るように収束していく。
「『不死鳥の羽ばたき』!!」
カッ!!!
っと槍が光を放ち、燃え盛る鳥が天空目がけて羽ばたく。
それは黒い雲を突き抜ける。
「……いったい何が起きてやがるんだよ」
目の前で起こる、あり得ない、の連続にオレの思考はひどく混乱していた。
だがそれも、アレックスと男の戦いの後ろにあの女の子がいたのを見つけて、吹き飛んだ。
女の子の横では白衣を真っ赤に染められ倒れている2人の姿があった。
まず間違いなく死んでいる。
恐らくはあの黒づくめに殺されたのだろう。
そうしてオレが落ち着きを取り戻したときだった。
不気味な程の輝きが天空からこぼれ出す。