PARADOX=パラドックス=
ブレイザー?ブレイグル?
神の遺した兵器にそれを操る騎士だ?
あり得ねぇ、意味が分からねぇ。
オレはこんなもんは信じねぇ。
「…………まてよ。さっきの奴らもブレイグルがどうのと言ってたな」
何に対してだった?思い出せ。
崩れた家の中、奴らは確かにブレイグルと言っていた。
「……はっ!」
また女の子と目が合った。
そうだ、奴らは確かに言っていた。
あの女の子に対して「ブレイグルの女」だと。
「あの女の子が兵器だと?冗談もほどほどにして欲しいもんだぜ、騎士さんよ。
あんな子がどうやって物を壊すって?どうやって人を殺すって?」
アレックスはゆっくりと女の子を見る。
そうだ、その瞳に写ったのは紛れもなく弱々しく震える女の子の姿だ。
お前等の言う兵器なんてのは何処にもありゃしねぇ。
神の遺した兵器だのなんだのと非現実的なお伽噺はお仕舞いだ。
そうだろ?優男。
「はっ」
オレはアレックスの真剣な瞳に言葉を失った。
それどころではない。
まるで頭の中で考えていた雑念にも似たり寄ったり現実逃避の思考を全て見透かされていたかのように。
「……彼女は、かつての大戦で数多の命を奪った不敗の兵器『黒涙』の一族の末裔です。」
「だから、あんな子が何をできるって言うんだよ!!」
アレックスはゆっくりと槍を構える。
「ちょっと待てよ、てめぇ何をする気だ!?」
無防備の女の子に槍を向けるだなんて正気の沙汰とは思えねえ。
こいつ頭がどうかしてやがる。
「信じられないようですので、その目で見て確認して頂きます。
彼女がこの世界にとってどれだけ驚異であるかを」
鋭い目付きで女の子を見据えるアレックス。
槍を握っていた手に力が込められ、軸足が地面にわずかに沈んだ。