PARADOX=パラドックス=
「アレックス!アレックスしっかりしてよ!!」
少年はアレックスの血で手を真っ赤に染めながら、腹部を圧迫していた。
おびただしいほどの出血が辺りの地面を染めていく。
「……ホニカ……すまない……君を……使っていながら、こん……な」
咳こむと吐血する。
黒ずんだ血が地面を濡らす。
「よくも……よくもアレックスを――許さないぞ"黒涙"!!」
ホニカと呼ばれた少年が女の子に向かっていく。
怒りに震えるその形相はただ憎しみだけを見ているようだった。
「ホニカ……やめ……ろ」
アレックスが震える手で制止しようとしたが、その姿を見たホニカの頭には更に血が昇る。
「うぉぉぉぉぉおっ」
「なっ、あれは炎?」
ホニカの怒りに呼応するかのように、ホニカの手から発生した炎が腕を包み込む。
「死ね"黒涙"!!」
「やめろっ!」
オレは咄嗟に女の子の前に躍り出ていた。
寸での所でホニカの拳が止まる。
その手は身体はガタガタと震えていた。
「はっ……ば……化け物」
震える瞳と声。
ホニカは尻餅をつく。
オレはゆっくりと振り返った。
そして全身の血液が制止してしまったかのような感覚を初めて味わった。
「――――何だよこれ」