PARADOX=パラドックス=
ザリッ!
急に背後に気配がしてオレは我に返った。
何かに頭を支配されていたが何を考えていたのかは何故だか思い出すことは出来なかった。
「おやおや、こりゃ大層なことになってるねぇ」
プカーっと白い煙を吐く人物。
赤いドレスに茶色い毛皮のショールを羽織っている。
「ル、ルーザ……あんたが何故ここに?」
ルーザはオレを見下ろし、何も言わずにすぐにアレックスに歩み寄る。
「これはひどいね。シド先生、あんたはこれを助けられるかい?」
愚問だ。
「無理だ。医学で治癒できる限界をとうに越えている」
「確かにね"医学で"治癒できる限界はとうに越えている。」
「そうだこれを治すことなど不可能だ」
オレがそう言い切るとルーザは笑った。
「あんたは頭は良いが柔軟性にいささか欠ける様だね」
「どういう意味だよ?」
「シルビーおいで!」
ルーザは物陰に向かい手招きをした。
ひょこっと小さな女の子が現れる。
「は、はい!ルーザしゃま」
テトテト歩き、両側に結んだ三つ編みが大きく揺れる。
白いナースの様な服に身を包む可愛らしい女の子。
「なんだこいつは?あんたの隠し子かなんかか?」
オレが指を指すと、シルビーはあっかんべーをした。
さっきの可愛らしいは撤回。
むかつく餓鬼だ。
「バカをお言いでないよ。この子はあたしのビジネスパートナーさね。
さぁシルビー。この男を治療するよ」
「はい、ルーザしゃま!」
ルーザが手を差し伸べ、それにシルビーが小さな手を重ねた。
その瞬間だった。