PARADOX=パラドックス=


神々しいばかりの光を放ったかと思うとシルビーの姿は消え、

ルーザの手には一点の曇りも無い、純粋な透明の液体が入った注射器が握られていた。

「なっ……さっきの餓鬼はどこに行ったんだ?」

辺りを見渡す。

『レディーに向かって餓鬼とは何でしゅか、失礼極まりないでしゅ!プンプン!』

「へっ……?


今、注射器から声がしなかったか?」

ルーザは意地悪な笑みを浮かべてみている。

「このシルビーは超稀少な『治癒』のアビリティを持つブレイグルなのさ。

ま、見てなね……」

ルーザは注射器をアレックスの傷ついた腕に刺す。

「シルビー『清浄の雫』」

『はいでしゅ、ルーザしゃま』

注射器から透明な液体がアレックスの体内に流れ込んでいく。

「……綺麗」

女の子がぼそりと言った。

オレはその不自然さにただ見つめることしかできないでいた。

液体が半分ほどになった頃からだろう。

「アレックスの身体が光を放っている……?」

液体が体内を駆け巡るのが目で分かるかのように、光の筋がアレックスの体内で光る。

それは黒い諸刃の刃に触れると、自らの光に染めるかのように、刃を照らし消滅していく。

「おいおい、まさか治るってのか?

そんなバカな事があって良いっていうのか?」


オレがそう呟くとルーザはいつもの様に不敵に笑った。
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