PARADOX=パラドックス=
「治るの?治るんだよね?」
ホニカがルーザの腕を掴む。
ルーザは何も言わずにその手を優しく退けた。
「いかにシルビーの力を使ったとは言え治すことはできない。
それが"黒涙"の最凶の呪いさね。
ただ、命を取り留めることはできるだろう」
注射器から全ての液体が体内へと流れ込むと、刃は消滅し出血が見る見る止まっていく。
そして注射器は再び光を放つと、可愛らしい女の子の姿としてシルビーが現れたのだった。
「何なんだ?あんた達は、ブレイグルって何だよ。
この女の子も、ヒュージとかいうのも皆々何なんだよ……」
オレは頭がついていかずに言葉が溢れでていた。
ルーザはゆっくりと立ち上がる。
「あんたの目の前で起きた事を認め、柔軟な頭で考えてみると良い。
あれは幻想?魔法?ファンタジー?いいや、もう分かるだろう。」
ルーザはシルビーから渡された葉巻に火をつける。
粘っこい白い煙が目の前で空へと昇っていった。
オレはルーザを見上げる。
ルーザは愉快そうに笑った。
「そう、これは現実さね」