PARADOX=パラドックス=
「ねぇ、シド。なんか、ほにゃあってするよ」
急に立ち止まったネオンが、オレの袖を引っ張りそう言った。
「ほ、ほにゃあ?
なんじゃそりゃ!」
オレが怒鳴るとネオンは目を瞑って手で頭を抑えた。
「なんかね、鼻がふわーってして、胸がぽわーっとして、気持ちがきらーってするの」
鼻がふわーってして、胸がぽわーっとして、気持ちがきらーっ……!!??
なんだそりゃ、つうかどんだけ語彙(ごい)少ねぇんだよこいつ。
「頑張って言い方を変えたみたいだが、全くもってよく分からん。残念だったな。
しかし、なんか良い香りがするな」
「良い香り……?」
ネオンは首をかしげる。
この動作が単純に「分からない」ではなく「分からないから、分かるように教えて」の意味だと最近分かった。
「だから……これは多分花の匂いかな?森の都が近いのかもしれないな。
人間てのは5感てのを持っていてだな、いろんな物にはいろんな匂いがあるんだよ」
ネオンは更に深く首をかしげる。
「お前の腕に鼻をあてて、鼻で息吸ってみろ。
いいから!」
ネオンはオレの指示通りに腕の匂いをかぐ。
嗅ぎ方がわからないのだろう、息を思い切り吸いすぎてむせていた。