PARADOX=パラドックス=
ネオンは「言われた通りにしたよ?」と上目遣いでオレを見つめた。
「じゃ、次はこっち」
オレはゆっくりとネオンの鼻に自分の腕をもっていく。
ネオンはまたむせるほどに大きく息を吸った。
「な?なんか違うだろ?それが「匂い」で、匂いを感じたのが「嗅覚」だ。
いろんな物にはいろんな匂いがあるんだよ」
なんとなく分かったのかネオンは目をキラキラと輝かせた。
なんか調子狂うんだよな、コイツ。
こんなのが最強の兵器だなんて、そんなの……
信じれない。そう考えようとした瞬間にあの夜を思い出した。
ジャックを八つ裂きにした黒い刃と、ネオンの頬を伝う冷たい漆黒の涙を。
「……うん……やっぱり!」
「ん?どうした?」
ネオンは匂いを嗅ぐことが気に入ったのか、自分の身体や周りの植物に鼻を近付けては匂いを嗅いだ。
そしてオレに振り向き言う。
「あのね、私。シドの匂い好きだよ」
「……なっ!!?」
オレは不覚にも顔が赤くなるのを感じて歩きだした。
ネオンが小走りで追い付き、オレの袖に顔を埋める。
「かっ……嗅ぐなぁぁあっ!」