PARADOX=パラドックス=
一方その頃。
オレ達を見送ったルーザの元を訪ねる人物がいた。
白いマントには二枚翼の正十字が描かれている。
しかしジャックや今までの騎士団とは少し違う。
正十字の中心にローマ数字のⅧ(8)が描かれていた。
カランコロン。
両開きの扉が開かれる。
ルーザは葉巻をくわえながら、ゆっくりとその訪問者を見る。
表情は無い。
「久しぶりだね……いずれは騎士団の誰かが来ると思ってはいたが、
まさかアンタとはね、あいつも酷いことをする」
ルーザは口からプカーっと白い煙を吐き出した。
「残念ながら上の命で私は来たわけではない。
私は私の意志であなたに会いに来た」
ルーザは最初から気付いていた。
扉の外に複数の気配があること。
それがブレイグルであり、訪問者の武器であることも、そして。
「「会いに来た」だなんて生温い言い方はおよしよ。
あんたは……騎士団は"黒涙"を逃したことであたしを捕らえに来たんだろ?」
ルーザのその言葉を待っていたと言わんばかりに、扉の影から2人の少年が現れた。
「流石はルーザ様。全てお見通しでしたか。
ですが、この私、悠久の騎士団第8分団長・"輝燕=キエン="のスワロの名に掛けてあなたを捕縛します」
ルーザは笑った。
悲しみにくれた表情で。