PARADOX=パラドックス=
スワロの視界にもう一枚の護符が見えた。
それはまるで爆弾が炸裂するかの様に忙しなく点滅していた。
「こんな時の為にここは人気もなく、誰も安易に近付いたりしない場所にした。
あんたなら死にやしないだろうが、まだ騎士団に捕まるわけにはいかないんだよ。
許しておくれ――スワロ」
護符は一瞬、強烈な光を放ったかと思うと大爆発を起こした。
スワロは身をかがめ、双剣で爆発を凌ぐ。
「くそっ、くそっ!
あんたは、ルーザは私が捕まえるのだ。
逃がしはしないぞっ!!!」
辺りの木々をも飲み込み、半径20メートルほどの広範囲に渡って巻き起こった爆発。
爆風で木々が揺れ、数少ない動物達が慌てて逃げ出していった。
焼け崩れたその場所でスワロは立っていた。
あれだけの爆発を直撃しても外傷は見当たらなかった。
「また、逃げられたか……」
ニコルとフィーダは人間に戻っていた。
がっくりと肩を落とすスワロの背を2人が優しく叩いた。
「やつはルーザだけは私が捕まえなければならないのだ。
やつは、やつは……
私の生き別れた兄の情報を持っているのだから……」
スワロは空を見上げた。
どんよりと鈍く光を透けさせる雲が、気の遠くなるほどにゆっくりと動いていた。