PARADOX=パラドックス=
オレはゆっくりと振り返る。
すると熊の足元で何かが動いた。
もぞもぞと不自然な水色の物体が動く。
「痛いじゃないのよ!
誰よ、この可愛いミュールちゃまに突進してきたバカは!!?」
見た目は十歳くらいだろうか、水色の髪の毛をツインテールにした小さな女の子が起き上がりながら叫んだ。
ミュールと自らを呼んだ女の子。
ふと前方に目をやる。
視界にはフカフカとした栗色の毛。
全体像は見えず、ミュールはそっとその栗色の毛に触れてみた。
「あら、そんなにフカフカじゃないのね。
手入れがなってないわよ」
そして、ゆっくりと視線を上の方に向けていく。
バチッ。と熊と目が合う。
ミュールは一瞬凍り付き、熊のよだれが目の前を通り過ぎた時にようやく我に返る。
「ぎぃょわぁぁぁあっ!!
なっ、な、なな、なに?
なんなのよこのバカでかい熊は?
ガゥゥアァァッ!じゃないわよ!!死んだふり?死んだふりをしたら良いの?そうなの?どうなのよー!」