PARADOX=パラドックス=
絵に描いたみたいに慌てふためくミュール。
そんなミュールを見てか、熊は混乱している様にも見えた。
そういや熊は聴覚に訴えると良いなんて聞いたことがあったな……
話しかけると困惑するだとか、どっかの地域では熊避けの鈴なんてもんもあるらしいし。
てことは、今が逃げるチャンス?
「ネオン、静かに向こうの草影に隠れてろ」
「え、うん。シドは?」
「オレはあそこのガキを抱えてからそっちに行く」
ネオンは「わかった」と頷いて、ハイハイをする様に地面を歩きだす。
すると黒い長いスカートがめくれあがり、白いパンツが見えてしまっていた。
オレは年甲斐もなく顔を赤くして、目を逸らした。
「…………ごほん。
さて、行きますか」
オレは騒ぎ倒すミュールにそっと近づいていく。
それと同時にだんだんと熊との距離が迫ってくるんだから気が気じゃない。
熊の手の射程内に入っても熊に反応はない。
どうやら本当に混乱しているらしい。
オレはバッとミュールを抱えあげる。
「きぃやぁぁぁぁあっ!
次はなに?次から次へとなんなのよ?
分かったわ、あたちみたいな可愛い子をさらうつもりなのねオヂサン」
ミュールはオレの腕の中でバタバタと暴れる。