PARADOX=パラドックス=
全ての植物が生まれた地。
森の都・リンクタウン。
土地の中心部には『世界樹(セカイジュ)』と呼ばれる大木がそびえたっている。
大木と言っても生半可な物じゃなかった。
「おいおい……マジかよ」
「木の上にお城が建ってる、すごぉい」
信じられないことに世界樹の上にはばかでかい城が建っていた。
「あれが『グリーズ城』か。
捨てられていた新聞で何度か当主の顔は見たことがあったが、実際にリンクタウンに来ることになるとは思っても見なかったな」
ライオット・グリーズ。
28歳の若さにして、38代も続く名家・グリーズ家の君主となる。
徹底的な実力主義者で、城内の執事から兵隊までこれまで世襲性により守られたしきたりを無に帰したことで世間を騒がせた。
自身も悠久の騎士団から誘いが来るほどの卓越した剣の使い手であり、君主となる前は副兵長として戦果をあげている。
「若き天才剣士にして名家・グリーズ家の当主か。
ある程度は定められたものかもしれないが、大変な道を歩くな……」
「シド?」
ネオンが不思議そうにオレを見上げていた。
「何でもない。さっさと外套技師を探そう」
そう言ってオレは何かを振り払うように歩きだした。