PARADOX=パラドックス=
ギギィィィィィイッ。
不快な摩擦音。
薄暗い店内には、壁一面にずらっと棺が置かれていた。
「……ちっ、不気味な部屋だな」
その数ざっと30はある。
造りかけのものも合わせたら50はあるんじゃないだろうか。
「誰だ?」
「は……?」
声が聞こえた方に顔を向けるが誰もいない。
ネオンも怯えているのか、オレの白衣のスソを掴んで離さない。
「誰じゃと聞いておる」
もう一度聞こえた。
「おいおい、まさか……」
オレの目の前にあるのは一つの小さめな棺。
ゆっくりとそれに近付いていく。
「シド、開けるの?」
ネオンが拒む様にしてスソを引っ張る。
「開けるしかねぇだろ」
オレはゆっくりと棺の蓋に手をかける。
カコッ。と軽い音がして蓋がズレる。
「う、うおぉぉぉおっ」
オレは意を決して一気に蓋を取り外した。
「おぉぉっ……あ?
何も入ってねぇじゃねぇか」
中は暗かったが何も入っていない。
オレは気を緩めて息を吐いた。
瞬間。
「ワシの棺を荒らすのは誰じゃあぁぁぁぁあっ!!」