PARADOX=パラドックス=


「うぁぁぁぁあっ!!」

「きゃぁぁぁぁぁあっ!!」


棺の奥から鉤鼻の老人の顔と手が現れる。

血走った目がオレを睨み付け、しわくちゃな手がネオンの足を掴んだ。

「むっ、この娘」

「い、い、い、嫌ぁぁぁぁぁあっ!!」

「げふぅっ!」

足を掴まれて気が動転したネオンが棺から身体半分だけ飛び出している老人の顔を踏みつけた。

「…………」

よくよく棺を見ると、奥に黒い暗幕が張られていて、向こう側に繋がっているらしい。

老人はその向こう側で息を潜めて、オレらに声をかけていたらしい。

「…………

おい、じじい」

「も、もがっ」

「いったいなにがしたかったんだ?」

「もー、むー、むが」

そうか。

ネオンに踏まれて喋れないのか。

ネオンは「嫌ぁ」と何度も繰り返しながら、踏みつけた足にぐりぐりと体重をかけていた。

オレはネオンの腕を掴んで、老人の顔から足を退けさせた。






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