PARADOX=パラドックス=
「さてと……
おい、くそじじい」
「はい、何でしょうか?」
ネオンは老人に怯えていてオレの背中に隠れている。
ネオンの靴跡を顔面につけた老人はちんまりと正座をしている(オレがさせた)。
「あんた棺屋だよな?」
「けっ、見てわかるじゃろ」
「あ?」
「は、はい。左様でございます」
睨み付ければ萎縮するが、根本がねじまがっているのか油断するとイライラさせられる。
本当にこんなやつがルーザの友人なのだろうか?
ルーザの前でこんなことしたら殺されるだろ。
「特殊な外套を作る職人を探していたら、ここにたどり着いた。
あんたは、その職人か?」
そこで初めて老人は真剣な表情を見せた。
「……いや、ワシではない」
「…………そうか」
老人の瞳は真っすぐにオレを見ていた。
からかっているわけでも嘘を吐いているわけでもなさそうだな。
結局は無駄足だったか。
「ワシは外套職人ではない。
じゃがワシの……」
老人が何かを言おうとした時、入り口のドアが不快な摩擦音をたてながら開いた。
「ただいまー。
ん?お客さんかい?めずらしいね」