PARADOX=パラドックス=


入ってきたのは15、6歳くらいのスラっと背の高い娘だった。

娘は床に正座させられている老人を見て「あぁ」と呟いた。

「また、お祖父ちゃんが何か迷惑かけました?」

娘は背中に背負っていたバカデカイ荷物を下ろしながら言う。

「ごめんなさいね。

ここ最近は棺で葬っていく風習も廃れてきちゃってて、たまにお客さん来ると嬉しくなっちゃうみたいで」

娘はツカツカとオレに歩み寄る。

そして歳の割りには荒れてしまっている手を差し出した。

「私はそこの棺屋のアジェットの孫娘で、リリネッタ・カーマイン。

皆からはリンて呼ばれてるわ」

「あ、ああ。

オレはシドだ」

手を握り返すと、手は荒れているだけではないと分かった。

マメか?いやマメが幾度となく潰れ、皮膚自体が極限まで硬化されている。

リンはゆっくりと視線をオレの背中に移した。

「り、リンや。

その娘は……」

「うん、分かってるよお祖父ちゃん」

ネオンを見つめるリン。

珍しいな……ネオンが初めて会う人に怯えていない。

リンはふと微笑み、口を開いた。

「どうやらルーザの紹介のようね。

あのオバサンまた厄介な客を寄越してくれて……」





< 64 / 87 >

この作品をシェア

pagetop