PARADOX=パラドックス=
別室に招かれたオレ達。
アジェットは3人分のお茶を煎れた。
「……ここではリンと2人で暮らしているのかい?」
古びた家具。
食器や日用品は2人が暮らすのがやっとくらいのものだった。
アジェットはオレのむかい側に座る。
「そうじゃ。
七年前にリンを引き取ってからな」
その表情で大体のことは想像がついた。
しかし、オレはあえて問う。
「リンの親は亡くなったのか?」
アジェットは悲しい顔をしながら一気に茶を流し込む。
「生きておるよ……」
「捨てられたのか?」
アジェットはゆっくりと首を横にふる。
「見るかい?」
見る?
会うではなくて、何故見るという表情をした?
アジェットは立ち上がり、隣の部屋への扉に手を掛けた。
ゆっくりと扉を開く。
「――――!!」
そこは何もない部屋。
あるのは2つのベッドだけ。
「これがリンの両親じゃよ」
管に繋がれる男女がベッドに横たわっている。
隣の部屋からでは呼吸による、腹部の上下動が見て取れない。
つまり、それほどに呼吸が薄いのだ。