PARADOX=パラドックス=
ルーザは葉巻で玄関の方を指す。
オレはその意味を察し、玄関の扉に鍵をしてシャッターを降ろした。
「『ヒュージの欠片』が欲しい」
「ヒュージの欠片?何だいそりゃ」
ルーザは葉巻をくわえ、カウンターの脇から出てくる。
「26年前にこの地に降った巨大隕石。それをあたしは魔界の石『ヒュージ』と呼ぶことにした」
「しかし、あれはずっと前に悠久の騎士団によって回収されているはずだろう?」
ルーザはカツカツとヒールで音をたてながら、店の入り口付近にある額縁の前に立った。
そして額縁を取ると壁に埋め込まれた隠し金庫が現れた。
ルーザはオレに隠すことなくパスワードを入力し、厳重な扉を開くと、中から小さな宝石を取り出した。
「……まさか!?それが」
荒削りというよりは、崩れ落ちたかのような歪な形。
しかし、それでも僅かな灯りを不気味に反射させる薄紫色をした石。
「こいつがヒュージの欠片さ。
確かにヒュージは悠久の騎士団によって回収されてしまったが、その回収作業の際に崩れ落ちたモノや隕石の落下の時に飛び散ったモノは未だに存在する。
そうさね。欠片を10個ほど持ってきたらありったけのタバコをくれてやろう」
「どうだい?悪くない取引だろう?」そう言ってルーザは笑った。