PARADOX=パラドックス=
扉が開きリンが入ってきた。
もう深夜を回って、外は少しずつ明るみ始めている。
ウトウトとしていたオレ。
リンが入ってきたことに気付き顔を上げると、驚愕した。
「……おい、あんた髪の毛どうしたんだ?」
三つ編みにしても太股のあたりまであった赤毛の髪。
部屋に入ってきたリンはボブよりも短いショートになっていた。
リンは力なく微笑み、ネオンが眠っていることを確認して話しはじめた。
「私の作る外套には特殊な素材が必要なの。
イービルフラワーの根、歩行樹の維管束、無葉花の新芽、ブラッドベリーの絞り汁……
そして職人の細胞」
「職人の細胞……だと?」
リンは机に突っ伏して眠るアジェットにタオルをかけ、その隣に座った。
「そう。職人の5〜20年分にあたる細胞。
昔は四肢の一つを犠牲にすることで作成していたの。私はその代わりとして髪の毛を差し出した」
オレはふと分かってしまった。
その外套に名付けられた名前の真意を。