PARADOX=パラドックス=
「その外套……かつてはブレイグルを捕える為の道具だったんじゃないか?」
四肢を投げうってまでブレイグル(他人)を守りたいと思う人間が、多いとは思えない。
つまりそれだけの価値がなければ職人にはならない。
ブレイグルから多額の報酬が与えられる?
それはない。
ブレイグルは今も昔も迫害されている歴史がある。
つまり報酬は人間から出ている。
「…………。
もう何年も昔の話よ。私が生まれるより前のね」
つまり兵器として扱われるブレイグルに対抗する為の手段だったのだ。
「……うぅん。
あれ?お姉さん髪切った?可愛い、似合ってるね」
ネオンが眠気眼を擦りながらそう言った。
「これ、あなたに上げるわ。
着てみて」
リンは封衣をネオンに手渡す。
ネオンはまるで「着ても良いの?」と尋ねるかの様にオレを見た。
オレは何も言わずに頷く。
人からの貰い物は初めてなんだろう、ネオンは嬉しそうに封衣に袖を通した。
「可愛い、似合ってるわ」
笑顔でそう言ったリンの悲しみが、強さが、オレを切なくさせた。