PARADOX=パラドックス=
キラーは深々と頭を下げた。
「な、なによ?」
何も言葉を発しない。
ただ頭を下げる、それがキラーにできるただ一つのことだったからだ。
「ヒュ……キラー、頭を上げるんじゃ。
リンや、あれは事故じゃった、キラーをこの子達をどうか責めないでやってくれ」
アジェットの言葉にリンは首をふる。
リンの目には身体も動かなくなって、どんどん痩せ細っていった両親の姿が浮かんでいた。
そうなってしまった元凶が今、目の前にいる。
冷静でいられるはずもなかった。
「許してもらえるだなんて思っていない。
ただ、一目で良い……
フランとケニーに会わせてはくれないか?」
リンは出口を開き、叫ぶ様に言う。
「帰って!
あなたに、あなたにパパとママに会う資格なんてないの!そんなことも分からないの!?」
「リンや……」
口を開きかけたアジェットをキラーが止めた。
「すまなかった。
私はこれで失礼する」
キラーは三度頭を下げて、店を後にした。