PARADOX=パラドックス=
「へっ、いったいその欠片にどんだけの価値があるっていうんだ?」
オレの問いにルーザは不敵に笑い答える。
「そうさね……金に代えられるような代物じゃあないが、安く見積もっても欠片一つで8000万J(ジュール※2J=3円)」
「は…8000万Jだと?」
「ああ……とは言え何万積まれようともこいつは渡せない。そういう代物さね」
ルーザは欠片を再び金庫の中に置き、扉を閉めた。
その上に少し埃をかぶった額縁を立て掛ける。
「それで、やってくれるのかい?返事を」
ルーザの瞳が怪しく輝き、オレはわずかに後退りをした。
「ま、待て……もし欠片にそれほどの価値があるのだとしたら、タバコとの交換じゃあ割に合わねぇし、それに……」
ルーザはオレに近寄り、葉巻の煙を顔に吹き掛けた。
オレは咳き込む。
「誰もタバコだけだなんて言っちゃあいないさ。もう1つこちらから提示する」
「何をだよ……?」
ルーザはオレに近より、そして耳元にまで口を近づけて小さく言う。
「あたしのもう1つの提示品は……
あんたの妹に関する情報さ」