大吉男と大凶女
「なにぃ?お前彼女居たはずだろう。まさか……」
「アイツの話はもうやめてくれ」

晴紀がゴンッと音を立てて頭を机にぶつけた。そのまま顔を伏せたまま、はぁ、と大きなため息をついた。俺からは晴紀の表情は伺えない。

「ありえなかったよ、ほんと」
「何があったんだ?」
「二股……の方がまだましだ。アイツ、五股だったよ五股」
「ごっ――」

自分から何があったのか問い詰めておいて、言葉が出なかった。まぁこの場合驚かないほうが不思議だが。

「よくそれで二ヶ月ももったな」
「いや、今思えば付き合い始めからどうもおかしかったんだよ。何?挙動不審って言うの?」

ちなみに晴紀の彼女、正確には元彼女は元日、こいつと初詣に行った時に、驚くことに逆ナンパされた、もといしてくれた女だ。

もちろん一緒に居た俺もされたが、俺は丁寧にお断りした。

「あん時は『こりゃ今年は幸先のいいスタートきったじゃねぇか』なんて思ったんだけどな。お前と離れた途端これだ」

と、いうのもナンパをしてきた二人組の女の狙いは、晴紀曰く俺だったらしい。晴紀はそれに便乗した結果……

「本当もう最悪」

という訳だ。
< 10 / 73 >

この作品をシェア

pagetop