大吉男と大凶女
「おい」

小声で晴紀を肘で小突いた。晴紀は太一に視線をやると

「ま、まぁ、元気出せよ、太一」

と、わざとらしいフォローをいれた。太一は元気な様子を取り繕うのだが、俺と晴紀からすればもう手遅れである。

「いや、太一、俺なんかさ!もっと酷いんだぜ!」

晴紀は今朝話をした、自分の身の上話を始めた……のだが、話をしている内に段々と晴紀まで元気が無くなっていった。

俺はとりあえずその場を離れた。

俺まで元気を無くしてしまう。という訳で俺は元気の無い二人をよそに、体育館の外へと逃げることにした。

外は暖房の名残が残っている体育館から出てきたので、やたら寒く感じられた。外は卒業生と先生達が写真を撮ったり、親同士で話をしたりとそれぞれ楽しみあっていた。

その時だった。

体育館の入口でそれらの風景を眺めていると、俺の横を机を運んでいる女子が通りかかった。

校舎と体育館は若干離れていて、その間のスペースは外に筒抜けになっており、駐車場代わりに使われている校庭が一望できる。つまり体育館と校舎の間は一旦外に出るため、足場が凍ってすべりやすくなっているの時があるのである。
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