大吉男と大凶女
なぜそんな説明をしたか。それは机を運んでいた女子が、足を滑らせ、事もあろうことに俺の方に倒れてきたからだ。

俺は彼女を受け止め、というか勝手に彼女がぶつかってきたのだが……とりあえず彼女の下敷きになり、地面に倒れた。

反射的にではあったが、左手で彼女の体を自分の方に寄せ、抑えるようにする。一方右手、否、右腕で倒れてくる机をいっぱいいっぱいになりながら抑えた。

それと平行して、頭の中では

「あ、俺どうしよ」

と、自分でも意外な程冷静に呟いた。

――案の定俺の体は地面にドサッ、ゴンッ、とリズムよく倒れた。後頭部を打った。涙が滲み出てきた。机は俺の腕に弾かれて、俺と同じように地面へと衝動を果たした。

「いったー……」

大きな物音が立ったので、何事かと思って体育館から何人か出てきた。と、同時に俺の上にいる女子はムクリ、と起き上がった。

「ちょっとぉー!!誰よ、恭子に机運ばせたのー?」

体育館から出てきた女子の一人が大声でそう言った。みるみる内に出来る人だかりの中から、チラリと晴紀の姿が見えた。
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