大吉男と大凶女
「じゃあお互い様ということで」
「なにっ!?私は譲らないぞ!!」
「先生こそ声がでかいです」

千里先生ははっとしたように自分の口を塞いだ。俺は未だに落ち着かない自分の心臓をなだめながら、ゆっくりさっきまで座っていた椅子に座った。

「で、どうしたの?」

千里先生は俺があさっていた場所を片付けながら言った。俺は背を向ける千里先生に向かって答える。

「ちょっと手首痛めちゃって」
「手首?何したの?」

俺は事の経緯を説明する。もちろんところどころ省いたうえに、登場人物も話していない。

「佳彩かい?」
「さすが先生」

少し間をあけて答えが返ってきた。言わなくてもすぐに誰が原因かわかる辺り、恭子が他にも被害者を出していることがわかる。

「まぁ、どんまいだね。どれ、ちょっと見せてごらん」

俺は右手を千里先生へ差し出す。すると、親指で部分的に触り始めた。

「あいだだだだっ!」
「ここね」

強引に痛んでいるとこを見つけた。次は関節が曲がるかを確かめる。どっちにしろ痛い。

「多分軽い捻挫ね。湿布貼っておくわ」

と湿布を貼ってくれた。
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