大吉男と大凶女
しばらくして歩美さんは寝息をたて始めたので、温くなったタオルをまた濡らして絞りなおし、とりあえずおでこの上に置いた。

するとタオルを置いた矢先に寝返りをうった。わざとか?起きてんのか?

おでこから落ちたタオルを拾い、大人しく椅子に座ることにした。携帯を取り出し、先程来ていたメールを確認した。

まずは太一。保健室に運ばれたのが歩美さんだと知ったらしい。歩美さんの容態を聞くメールだった。太一は俺が今いる状況を知るはずがないので、多分「近所なんだから調べて俺に教えろ」的な意味だろう。

俺は「知らん」と三文字で返事を返しておいた。

っていうかそれはほぼストーカーと同じだぞ、太一。

次は晴紀のメール。内容は怪我の心配と明日遊びに行かないか、というお誘いだった。

これの返事は保留だな。後で返しておこう。

で、最後に恭子。言うまでもなく謝罪文だった。俺は顔文字もセットで返事を送った。会話のやりとりとほとんど変わらない。

一通り返したので、俺は携帯を閉じてポケットにしまった。俺は再び寝返りをうち、きっちり仰向けになっていた歩美さんのおでこに改めてタオルを置いた。
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