大吉男と大凶女
カーテンを完全に開けて、紐で結わえる。カーテンを開けると、そこには歩美さんがソファにちょこんと座っていた。

「歩美さん?」

声を掛けて表情を覗いてみると、歩美さんはコクリコクリとまた眠りそうな状態だった。

歩美さんの頬はまだ赤く、明らかに熱がある。

「歩美さん、歩美さん」
「んむ……」

ダメだ。もう寝る気満々だ、この人。俺は渋々歩美さんの前に背を向けながらしゃがみこんだ。

「ほら、千里先生待ってるから」

俺がそう言うと歩美さんはのそのそと俺の背中におぶさってきた。

「よいしょっと……いててて」

勢い良く立ち上がる。古傷の膝が痛んだ。

床に置いていた歩美さんの手荷物を手にもって、歩美さんが落ちないように、膝裏に腕を入れる。

歩美さんをおぶり、行儀が悪いとわかってりながら、足で保健室の入口を開けた。

「おっ」
「あっ」

開けたと同時に千里先生と鉢合わせた。千里先生は俺の状況を見るや否や視線を少し下に落とした。

「いや、別に下心とか無いから」
「健全だったらテントがはると思ったんだがな」
「だから下ネタはやめろって」

敬語など使う気すら無くなった。
< 35 / 73 >

この作品をシェア

pagetop