大吉男と大凶女
「さ、三股……」

あれー、どっかの誰かとなんかかぶるんだが気のせいではねぇよなー。

失礼。多少壊れたリアクションをとってしまった。丸々晴紀とかぶっている。違うのは数字だけだ。

――晴紀の勝ちだな。

と、不謹慎なことを思ってしまった。

しかしよっぽどだったのだろう。歩美さんの言葉には本当に怒りというか、殺意というか……とりあえず何か滲み出ていた。

「いい人って感じなほど非道いものよ。あんたも気をつけなさい……」

返事はしないでおいた。元気づけるために晴紀の話をしようかと思ったが止めた。笑い話にしてはいけないだろう。

その時だった。

隣を歩いていたはずの歩美さんがドサッと音を立てて倒れた。

「ちょっ……!!」

倒れた歩美さんを起こす。顔が真っ赤だったのを見て素でヤバいと感じた。

歩美さんをおぶって、なるべく歩美さんの負担にならないように早足で歩いた。

ここまでなるとは正直思っていなかった。歩美さんそんな素振りも見せなかった。いや、見せなかっただけで実はずっと大変だったのかもしれない。

――同じようなことを繰り返した自分に嫌気がさした。

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