大吉男と大凶女
「だろうな。あの人がそんな素直に言う訳がない」
「さすが結兄、わかっていらっしゃる」

冷蔵庫に向かっているわずかな間に、結綺が包丁とまな板から軽快な音を立てながら、ネギを細かく、小さく刻んだ。

「ありゃ、多いな」

と、刻み終わったネギの山を見て、そう感想をもらしたが

「ま、いっか」

そう言って刻んだネギを米と一緒に鍋に突っ込んだ。

俺の家ではこうやってお粥を作るときに、刻んだネギを入れる。

その後には軽く醤油を入れ、完成時に塩をひとつまみいれる。そうすると、ネギの甘味と塩のしょっぱさ加減が絶妙なテイストになるのだ。

グツグツと音を立てていた鍋が、段々と重苦しい沸騰音に変わってくる。

「これはそろそろいぃんじゃないっかなぁ」

嬉しそうに結綺が鍋の蓋を開けた。

「うわ」

鍋の蓋を開けた時に出たのは歓喜の声というよりも、また驚きという訳でもなく、自分に対して呆れかえった、という声で

それはつまり俺の予想通りの出来事になっていた。

「鍋一杯になってたろ」
「うん……っていうか気付いてたなら教えてよ」

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