大吉男と大凶女
「結兄、ずるくない?」
「自分で作れと言ったのは結綺だが?」

ちょっと嫌味っぽく言った。

チキンライスを皿に移し、次に卵を三つボウルに割り、掻き混ぜる。

フライパンにサラダ油とまたマーガリンを足す。そしてそこに溶き卵を入れて、箸で思いきり掻き混ぜる。

で、それを一つの大きな固まりにして、形を整え、チキンライスの上に乗せて

「よし、っと」

テレビ番組とかではナイフを使うが、面倒くさいので、箸で切り込みを入れて……

「完成っ」

巷で人気のとろとろオムライスの完成である。最後にケチャップをかけて仕上げる。

オムライスをテーブルに移動させて、ボウルやらフライパンやらの調理器具を水に浸す。

スプーンを出して、俺はいざ食べようか、と振り向いたら

心のどこかでうすうす感じてはいたが、結綺がつまみ食いをしていた。

「おい」
「んむっ」

結綺からは詰まった返事が返ってきた。オムライスはしっかりと端っこが欠けている。

「だっておいしそうだったんだもん」

と、しょんぼりした。俺は椅子に座って、欠けたオムライスを口に運んだ。
< 54 / 73 >

この作品をシェア

pagetop