大吉男と大凶女
「もう一口だけ食え」
「えっ?」

予想外の言葉だったのか、結綺は慌てて顔を上げた。

「昨日のお礼だ」

俺は結綺の方にオムライスを差し出した。

「なるほど。さすが結兄、世の中の仕組みを分かっていらっしゃる」
「何様だ。食べさせないぞ」
「スイマセン」

片言の謝罪だった。

しかし昨日は結綺のおかげで歩美さんを看病出来たことだし……ご褒美というやつだ。

俺が何様だ。

「うん、さすがは結兄。完璧なお手前でした」

と言ってオムライスを戻した。オムライスは半分近くまで減っている。

「……こら」
「食べたもん勝ちっ。あ、食器は私が洗うからそのままにしておいて」

結綺はそう言い残し、自分の食器を下げて二階へと上がって行った。

「はぁ」

ため息をついて半分になったオムライスに手をつける。

「うん、なかなか」

そう呟き、残りのオムライスをちゃっちゃっと片付けて、食器を下げて台所を出た。

「洗い物頼むぞー」

結綺の部屋のドアをノックして一言残すと、ドア越しに「はぁい」と返事が返ってきた。
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