大吉男と大凶女
「まだ時間あるな」

ベッドから飛び起きて、ハンガーに掛けてあったジャンパーに袖を通す。

部屋を出て、階段を降り、玄関に向かう。途中台所から結綺に呼び止められた。

「結兄どっか行くのー?」

カチャカチャと食器のぶつかり合う音を立てながら、ドア越しに質問してきた。

「ちょっと歩美さんとこになー。結綺も行くかー?」「あ、待って待って。そしたら届けてほしいものあるから」

ということは行かない、とうことなんだな。俺は台所のドアを開けた。

「これ、昨日の余り!」

そう言って冷蔵庫から昨日の余ったお粥を取り出した。

「まだあったのか……」
「うん。どうせだから持って行って!」

結綺はどんぶりに入ったお粥を小さな土鍋へと移す。

「さすがに同じのだと飽きるだろ」

差し出された土鍋を受け取らずに、ジャンパーを脱いで椅子にかけた。

土鍋をコンロの上に置き、火をつける。冷蔵庫から卵を取り出して、洗い立てのボウルに割り、菜箸で掻き混ぜる。

溶き卵を暖かいお粥に入れて、ゆっくりと掻き混ぜて、そこに醤油をいれた。ジューと良い音をたてる。

「うわ、いい匂いっ」
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