大吉男と大凶女
醤油の香ばしい香りが、結綺に感嘆の声をあげさせ、俺の食欲もそそった。

「卵が入りゃ何でもおいしくなるんだ、うん」

なんか自分にそう言い聞かせるように言った。

実は適当に入れてみたものなので、正直こんな上手くいくとは思わなかった。

おもむろに、横から結綺がスプーンを伸ばしてきた。

「あつっ」

少しとは言え出来立てなので熱いに決まっている。息をかけて冷まし、口にいれた。

「うまいよ、これ!!」

結綺は目を見開いて言った。それほどのものかと思い、俺もスプーンで一口食べてみる。

「おぉ……」

予想以上だった。まさか昨日のお粥が卵と醤油だけでこんなに美味くなるのか……。素直に驚いた。

結綺はぴょんぴょん跳ねて興奮している。

「残りのお粥もこれにしよっか」

と言って、残りのお粥を取り出すと、小さな鍋にうつした。

「じゃ、俺はこれを歩美さんに届けてこようかな」

鼻歌を歌いながらお粥を調理する結綺をよそにジャンパーを着て、ミトンを着けて、熱い土鍋を持って玄関を出た。

外は春が近いとはいえ、まだ三月。土鍋の蓋からはもくもくと湯気が洩れていた。
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