大吉男と大凶女
歩美さんちは昨日も言った通り、すぐそこにある。だから土鍋の熱はまったく冷めることのない内に歩美さんの家についた。

ガレージに車が無いのを見ると、歩美さんのお母さんはやっぱり居ないらしい。

歩美さんちのチャイムを押すと……誰も出て来なかった。

だが玄関は開いていた。

「無防備すぎるだろ、ホント」

勝手に玄関を開けて侵入し、鍵を閉めた。なんか俺が泥棒みたいな言い回しだな。

靴を脱いで、二階に上がり、歩美さんの部屋に向かった。

「歩美さ〜ん」

囁くような小さな声で探りを入れるように歩く。

と、歩美さんの部屋が見えたと思いきや、またもや無防備にも部屋のドアが開いていた。

「歩美さん入るよ――って」

歩美さんは寝息を立てて寝ていた。玄関、部屋、歩美さんと、立て続けに無防備無防備無防備、だ。

寝ているならしょうがない。俺は歩美さんの部屋を後にして、ゆっくりとドアを閉めた。

一階に降り、台所のコンロの上に土鍋を置き、テーブルの上にメモ書きを残した。

「これでいいだろ」

物音をあまり立てないように玄関を出て、玄関の鍵の秘密の隠し場所から鍵を拝借し、玄関に鍵をかけた。
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