大吉男と大凶女
「うえっ!?えぇーっ!?」

もちろんこれは口には出さなかった。

周囲の視線が何故か俺に注がれた。

「俺、何か悪いことした?」と自分を指差し、周囲にリアクションを求めた。

するとどうしたことか、周囲の人達の反応は

「ダーメだって、そのお婆ちゃんに声掛けちゃ」と、しきりに顔の前で手を振ったり……

「やっちまったなぁ、お前」という表情を浮かべたり……

「まぁ、どんまい」と、手の平をこちらに向けて苦笑い、というのばっかりだった。

「…………」

何が何だかわからなかったが、一つ分かるのは俺は間違ったことをしてしまった、ということ。

え?どうなの?老人に席を譲るのが悪いって。

と内心思い、吊革につかまりながら、ため息をついた。

「ちょっと、あんた、何ため息なんかついてんだい」

お婆ちゃんから声を掛けられた。

「私に対して席を譲っておいて、何も無しかよ、みたいな顔しくされおって、失礼な小僧だね〜、あんた利益目的かい!!大体ね!!…………最近の…………だからダメ…………」

以下省略。早い話が説教をくらう展開に発展したのです、うん。

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