スノーフレーク
昼休みも終わりかけ、教室に戻ろうと保健室を出ると聞き覚えのある声とすれ違った。思わず振り返り何人かの友達とじゃれあう中の一人だとわかった。この声って…そうだよね?やっぱり!絶対そうだ……!私の疑いが確信へと変わっていった。
あの時、お腹の痛みを誰にも言えず耐えていた私に優しい言葉をかけてくれた人…。
カイロの男の子だ。
お腹の痛みと戦う事で精一杯だった私はカイロの男の子の顔を見ている余裕はなかった。
でも男の子らしい低いあの声はしっかり覚えていた。
でも声だけでは同じクラスとは言え顔も知らないその人を探しあてる事は難しく、なんとなくそのままになっていた。
向こうだって、私の事なんかとっくに忘れてるよね。今度は私の事なんかいてもいなくても同じのように、友達との会話に夢中でお前バカだろなんていいながら笑って通り過ぎて行くんだもん。でも低い声で優しく心配してくれた男の子の笑い声にドキドキした。そんな自分を見られるのが恥ずかしくてすぐに前をむくと私も自分の行く方向へと歩き出した。行きよりちょっと暖かい気持ちになった。そうだ。気付いてくれた人がいたんだ。あの時のすごく救われた気持ちも忘れてすべてが最悪だと決め付けていた。そうかっ、全部が全部最悪な訳じゃない。

やっぱり…お礼がいいたい。
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