苦しみの(涙)
息を切らしてたどり着いた藤咲宮。
案の定龍樹はそこにいた。
真ん中にポツンと立っている後ろ姿は儚くて
触れてしまえば消えてしまいそうなな感じがして声をかけるのを躊躇われた。
今目の前にいる後ろ姿は昔とは違い、
柔らかな線の体つき
流れるような黒髪
そこにいるのは、知ってるけど知らない龍樹だった。
最後に見た後ろ姿は小さくて幼かった。
「龍樹。」
声をかければ、はっと振り返り
「龍轍。」
戸惑いながらも笑みを浮かべてくる。
「早くしないと皆が待っているぞ。」
「あっ、ごめんなさい。」
笑みからしょんぼりとした表情になっても、
またそれが子犬のようで愛らしいんだ。