苦しみの(涙)
藤の花をかたどった簪。
こんな簪、俺は知らない。
尋ねたら、お吉からもらったと君は言う。
お吉…。飾り屋の息子か……。
だめだよ。そんなやつからもらったら。
君はすべて表面しか知らない。きれいな汚れのない表面。汚くて毒々しい裏なんて君は知らない。
知らない…。
いいや、知らなくていいんだ。裏はとぐろを巻いた蛇のように君に巻き付いてしまうから。
俺みたいに……。
バキッ
簪を君に見えないところで壊す。