苦しみの(涙)



こちらを見ず、ただ曇天を仰ぎながら尋ねてきた。





そんなこと知るよしもないし、知ろうとも思わない。


もともとの名は龍樹なのだから。




「菜舞露…。菜の花のように舞い散り露に濡れる。」



「それがなんだというんだ。」


「そうたったそれだけの意味を父と母は菜舞露に与えた。



そして、名を与えたのに忌み嫌い捨てようとした。
そこにお前が取引を持ちかけてきた。」



そう。人の欲深さを利用した、一番穏便にいく方法。





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