B.B
若葉を家まで乗せていったあと、ぼくは一人で自転車をこいだ。気づくと辺りはすっかり暗くなっていた。帰りたくないな、と思う。





誰かがぼくの帰りを待っているわけでもないし、今から夕飯を作るのも、ひどく面倒なことに思えてきた。





それでも結局家に帰ることになることが、ぼくにはなんとなくわかっていた。空腹には耐えられないし、風呂にだって入らなければいけないからだ。





ぼくは自転車からおりて、とぼとぼと歩き始めた。できるだけ、家までの距離を縮めたくなかったのだ。





そうして歩いていると、がさがさと木々の揺れる音がした。





長いあいだ都会で暮らしていたぼくは、こういった自然の動きに敏感だった。なんだか不気味に思って、急に早く家に帰らなければ、という気になってくる。





がさがさ、がさがさ……。





まるで、けものがいるみたいだ、とぼくは思った。





がさがさ、がさがさ……。





ごろごろごろっ!





何かが、転がってくるような音がした。





背筋が粟立つ。まさか、本当に、けものが……。





……それは、ぼくの足元に転がっていた。





ーーなんだ、これ……?




それは、黒い。





ぼくは屈んで、恐る恐るそれの顔をのぞきこんだ。





暗くてよく見えない。でもそれは、まちがいなく人間の女の子だった。











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